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  • タイトルは夏目漱石『草枕』の一節。ここは、本業である研究以外の日頃の活動、出会った人々、読んだ本、見た映画などなどをご紹介するブログです。
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『映画のなかのアメリカ』を読みました!

 先日、『映画のなかのアメリカ』(朝日新聞社)という本を読みました。




 著者は藤原帰一。その世界では有名な政治学者です。自分も以前『デモクラシーの帝国―アメリカ・戦争・現代世界』(岩波新書)という本を読んだことがあります。そんな政治学者が映画についてどのような議論をするのか気になり、読んでみました。

 とはいえ、この本は映画を「作り手が表現しようとする内容だけではなく、観客が受け入れる社会通念を投影する、いわば社会的存在」としながら、「映画を通して、アメリカ社会とアメリカの政治を考えること」を目的とした本です。ジャンルは、「映画関連」というより「政治関連」の本なんですね。

 というと、お堅い本のように感じますが、口語表現も用いながら、映画を通じて気軽にアメリカ政治を語っていきます。というより、映画について話している部分の方が、多いのではないでしょうか?まあ政治に詳しいおじさんが、映画を見終えた後のカフェで、作品について話しをしながら、政治についてうんちくを語る、という感覚で読めば、なかなか楽しめる本かと思います(^_^)。

 章立ては全15章。各章ごとに異なるジャンルの映画を通じて、アメリカ政治について語っております。個人的に最も面白かったのは第13章「魔法の王国」のところ。ここは、ディズニーのアニメ映画の影響力を扱った章です。

 自分は、つい先日『ナルニア国物語第1章 ライオンと魔女』を見たばかりですが、この作品もディズニー映画です。考えてみると、自分はこうした実写のディズニー映画は別として、アニメの方を見たことがありません。

 塾の子供たちと話していて驚くのですが、いまどきの子供たちは、誰でもディズニーアニメを見ています。中には作品のセリフを全て暗記してしまっている子などもいるほど。「その努力を勉強に向けんかいっ\(゚ロ゚ )」と思わず突っ込まずにはいられません。それだけ日本で、ディズニーアニメが浸透しているということですね(^○^)。

 面白かったくだりの一つは、ディズニー映画の暗黙の掟について触れたところです。周知の通りディズニー映画は、子供をターゲットとした作品を手掛けております。そのため、ディズニー作品には、性的描写は当然ダメ、登場人物を善と悪を分けるなど、暗黙の了解事項があるそうです。

 先日、元職場のRさんと『ナルニア』では戦闘シーンで血が流れないという話をしましたが、これもディズニーの暗黙の掟のようです。他にも、具体的な実例を挙げながら掟について説明されております。

 もう一つは、ディズニー映画の礎を築いたディズニー氏について述べられたくだりです。この方は、徹底的なナショナリストで、白人至上主義者、大のアンチ共産主義だったそうです。マッカーシー時代の赤狩りに見られるように、左翼的な人の多いハリウッドにおいて、このような人物は希少だったのではないでしょうか。

 ちなみに、ディズニーが直接・間接的に関わった初期作品には、黒人や黄色人種をあからさまに馬鹿にしたり、大戦中には敵国ドイツへの敵愾心を煽るような表現が、作品中に見られるということでした。つまり、作品の中に政治的意図が込めていたんですね。

 現在、そうしたあからさまな表現はなくなっても、ディズニー映画は、例えばアラジンのように、明らかに欧米のキリスト教世界とは異なった世界の物語ですら、アメリカナイズさせ世に送り出しています。
 ハリウッドがアメリカ的価値観の世界普及の片棒を担いでいるというのは、しばしば言われていることです。この点で、ディズニーも一般的なハリウッド映画と程違いがあるわけではありません。しかし、ディズニーの場合には、ターゲットが子供。いわば、ディズニー映画はアメリカ的価値の教育機能を果たしているのではないか。というのが筆者の主張でした。

 他にも『ロッキー』や『エクソシスト』とアメリカの戦争との、意外な関わりであるとか、パニック映画に見られるアメリカ人の危機意識の話など、この本は映画を通じて、ちゃんとアメリカの政治、社会を語っております。ちょっと変わった本でした。

 それにしても、驚いたのは映画についての筆者の博識です。有名な映画からマニアックなB級映画、インディーズものまで、かなりの映画をご覧になっているようです。学者というのは、専門とする研究領域について詳しいのは当然かと思いますが、こうした趣味的な領域について知っていて、かつうんちくを語れるというのは、粋でおしゃれだなーと思います。自分もこうありたいと思う1冊でした(^_^)。 

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